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蟹工船・党生活者 (新潮文庫)

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蟹工船・党生活者 (新潮文庫)

さすがプロレタリア文学の名著!
 さすがプロレタリア文学の名著ですね。とても80年前の作品とは思えないリアリティーがあります。また、読む者をグイグイと作品の中に引き込んでいく力があります。

 派遣労働者の差別や貧困、過労死の問題等に見られるように、確かに、この作品が多くの若者や厳しい労働環境の中にある人々に受け入れられる社会的環境が今の日本にあります。
 しかし、それだけでなく、小林多喜二の『蟹工船』が、現代の若者にこれほどまでに読まれている理由としては、やはり、『蟹工船』という作品の文学作品としての優秀性があるのだと思います。小林多喜二は、格差社会と貧困を生み出す本質を鋭く見抜くと共に、そうした現実と人間はいかに向き合うべきかということを、まさに優れた文学作品として描いたのです。だからこそ、『蟹工船』は80年という時代を超えて、現代にまで読み次がれているのではないでしょうか。

 余談ですが、新潮文庫の『蟹工船』は、昔の版よりも、活字も大きく、とても読みやすいと思います。また、文庫の表紙も、とてもインパクトがあります。

時代は繰り返す
プロレタリアとか共産主義という言葉に憧れをもったことはありませんが、組合がない職場でのフリーター、強者のための規制緩和によるジニ係数0.5超え、などの現在の社会問題を考えるとき、良き参考になる本です。ハラハラして吸い込まれるような文体は、文章を書く者にとって参考にしたいものです。小樽の町を文学としての視点から旅をしたら面白いでしょう。

現在も搾取はあるなー
共産主義を信じるわけではないが、資本主義はいつでも労働者につらいものだと思わされる一遍。現在のワーキングプアにも通じる作品。

文体が古くて読みにくい。内容は良かった。
オホーツク海に浮かぶ船の中… そんな密室で行われたパワハラと、それに団結して立ち向かう労働者の話。読み慣れない古い文体で、情景が描かれた最初の数ページを読むのが苦痛でした。で、修羅場にさしかかった真ん中編から読むと、すんなり入れました。後から「マンガ蟹工船」という本が出ている事を知って、そっちにしとけば良かった…とも思いました。

現在も繰り返す「蟹工船」の世界
 過去に何回か読もうと本書に挑戦したが、船上での暴力を伴う過酷で劣悪な労働条件の下で働く者の血と汗と、船内のリアルな描写による不潔で、悪臭がただよってきそうな気配に、読書欲がそがれて、挫折を繰り返した。

 本書の内容は、カムチャツカ沖で操業する蟹工船上を舞台に、貧しい出稼ぎ労働者たちが、常識を超える悪条件の下で労働を強いられ、かつその彼らに暴力を振るう現場監督の労務政策の耐え難い限界に抗して、なかば自然発生的なストライキに立ち上がる物語である。
  
 暴力的な労務政策は別として、今日の低賃金と無権利状態の派遣労働者・アルバイト社員などは「蟹工船」に近いか、類似した職場環境で働いていると思われる。

 長時間労働や成果主義が広がる中で過労死・過労自殺が後を絶たないのが現状であることが、それを物語っている。つまり、本質的には80年前の日本の資本主義と今日の資本主義の真髄は変わっていないといわざるをえない。

 本書は80年以上も前の古典だ。しかも用語解説も付されていないし、当て字も多く読みづらいと思うのだが、それでもこの古典を読み、いまの厳しい労働環境を変革しようとする若者が大勢いることは心強い限りだ。

 今回は彼らのエネルギーに勇気づけられて、私もやっと読み終えて、名作だと実感した。


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フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

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フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

自己言及のパラドックスが味わえる良書
面白くて1秒でも早く読破したい本は山ほどあるが、面白くて1秒でも早く読破したいが読破してしまうともう先が読めなくなって深い悲壮感に襲われることを覚悟しなければならないという「自己言及のパラドックス」が味わえる数少ない良書である。

数学嫌いでも、ドキュメンタリー好きなら必読。
タイトルだけだと誤解しかねないですが、定理の証明が載っている訳ではありません。(だいたい、証明自体はとても常人に理解できるものではありません。)これは、非常に秀逸なノンフィクション・ドラマです。小説好きな文科系の方には是非読んでみて欲しいと思います。中学校で習った「ピタゴラスの定理」さえなんとなく知っていれば、読むのに何の苦労もありません。読み出したら一気です。次の日が休日であることを確認してから読んでください。著者も素晴らしいですが、このような題材の文章を、軽快且つ平易に訳している訳者もとても素晴らしいと思います。快作。

ドラマティック
「ここで終わりにしたいと思います。」(本文より)

この本は、数学の本でも理系の本でもなく、数学の歴史に根づいた、ばかでかいスケールの人間ドラマである。

思うに、科学や数学などの理系の物語は、おうおうにして、他の種類の物語よりも壮大なロマンとドラマティックさを含んでいる。
著者はそうしたドラマをわかりやすく書いているため、門外漢でも非常におもしろく読みやすい。
たとえば、ワイルズ博士がフェルマーの最終定理を照明したのが、妻の誕生日プレゼントになるなど、ドラマティックな物語が展開される。

結局、フェルマーの最終定理については、最初から最後までさっぱりわからなかった。
にも関わらず、読後はなんともいえない充実感がある、なかなか稀有な本。

傑作ドキュメンタリー
数学におけるノーベル賞と言われているのが、4年に一度、国際数学者会議で授与されるフィールズ賞である。ただし、40才以下の数学者が対象である。
本書の主人公、アンドリュー・ワイルズは、1998年、フィールズ賞の受賞制限年齢を超えていたが、350年間未解決だった「フェルマーの最終予想の解決」という業績に対し、史上初めて特別に1998年にこのフィールズ賞を授与された。
原著はこれ以前に書かれているため、フィールズ賞受賞の記述はない。ワイルズの業績が数学史上特筆すべきものであったことを示すものであった。

フェルマーの最終予想の問題が非常にシンプルであるにもかかわらず、どれほど、この予想の証明が難しかったか、大数学者コーシーですら誤った証明を発表し、350年間、目もくらむような多くの大数学者たちが、この問題に取り組んでいったか、若かった谷山豊、志村五郎が、日光での国際会議で配った一つのレジュメが与えた衝撃、谷山の自殺、19世紀31歳で決闘で死んだ天才ガロアの生涯の詳細な記述、ワイルズの最初の証明の致命的欠陥、そして、ワイルズの証明がどれほど広大な分野を含んでいたかが、素人にも雰囲気が伝わるように書かれており、著者の才能に驚く。

途中で読むのをやめることができなかった。



「解き明かすこと」への情熱
何気なく雑誌のクロスワードパズルを解き始めたら、だんだんと熱中してしまい、
「最後まで解きたい!」みたいになってしまった経験は、結構誰にでもあると思います。
そんな人間の感情が、
フェルマーの最終定理の証明という、
世界最高峰の知の舞台でも同じように繰り広げられていたことを見事に描き出した作品です。
全てを賭けてこれを証明したい、そんな熱い数学者たちのドラマは読み応えたっぷりです。
高度な数学への言及も、わかり易く書かれているので、
数学という壁に臆することなく、このアツい数学者たちの世界観を堪能してください。

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