ブログトップ >> 個別記事

あの戦争から遠く離れて―私につながる歴史をたどる旅

amazonでチェック

あの戦争から遠く離れて―私につながる歴史をたどる旅

将来
すごくおもしろかった。著者も非常に若い。
こうした視線はとても面白い。また、親族だからこその、深みというものがある。これは他人を取材してなかなか出せるものではない。
ただ、だからこそ、そこに不安があるように思えた。著者は若い書き手だ。だから、これからも様々なものを書いていくだろう。
ただ、いつまでも親族を書き続けるわけにはいかない。その時、彼女が何をテーマにして書くつもりなのか。正直、この本はとても面白かったが、その部分がうまく見えてこなかった。

熱い本である。素晴らしいノンフィクション!
著者は日本の戦後を「戦争を忘れようとしてきた時代」だと言う。
そして今や「忘れようとしてきたことすら忘れているのではないか」とも書く。
著者は残留孤児の子供として生まれ、「久枝ちゃんのお父さんは中国人なの」と言われた。
そのため、無意識のうちに「中国」を遠ざけてきた。
しかし成長するに従って、父が27歳まで過ごした「中国」と
「あの戦争」について、もっと知りたいと渇望するようになる。
約10年をかけての聞き取りを経て出来上がった渾身の一冊である。

ノンフィクションというと、対象から一歩離れて冷静に描写するものが多い。
しかし本書で著者が取り上げている対象は、父と自分である。
父の歴史と自分史が交錯する作品は、思い入れの強さからか危ういほどの熱さを帯び、
小説も及ばないような訴求力を持った。

著者自身の揺れる心境がそのまま吐露されており、
また父の中国時代の生活も、非常によく取材されて書かれている。

「あの戦争」がもたらした数々の悲劇を少しでも多くの人に知って欲しい、
そういう熱い思いの伝わってくる力作である。

久しぶりに感動しました。
考えてみれば当たり前ですが、関東軍の兵士は日本人であっても現地採用、本社採用などで身分が分かれていたことに気付かされました。著者のお父上様のご苦労は涙無くして読むことができませんでした。中国に同化するため中国語を必死で学んだ幼少期、そしてやっとの思いで日本に帰国し再び日本人となるために必死で日本語を学んだ青年期。頭脳の優れた方だったのでしょうね。良い養母に出会ったことも幸運でしたね。この本で書かれているように関東軍兵士の家族は早い時期に後方に逃れることができたようですが、開拓団の方々はそれもできなかったことを考えると複雑な思いです。この本では日本に帰国した中国残留孤児の苦悩にも触れていることに好感が持てました。江戸時代ロシアに漂着した大黒屋光太夫のことが頭をよぎります。光太夫も女帝エカテリーナに直訴してやっとの思いで帰国しますが、江戸幕府は外国を見たという理由で幽閉してしまい光太夫は家族と再び生活することなく幽閉状態で亡くなりました。お国のために死ぬのは止めましょう。与謝野晶子も「すめらみことは戦いに、おおみずからは出でませね」言っています。

戦争を知らない世代にこそ読んで欲しい
この本は厚い本である。そして本の中身もとても熱かった。

多くの日本の若者がそうであるように、
私は戦争関連の書物を進んで読もうとはしなかった。
読んで重く悲しくやるせない気持ちになるのが怖かったからだ。
この本は私にとって初めて「中国残留孤児」問題を、
現在まで続く「戦争」の傷跡を、真正面から向き合うきっかけを作ってくれた。

前半は、残留孤児であった筆者の父親の人生を。
後半は、筆者自身の留学経験や父の人生を辿る旅を。

父親が引き取られた中国の農村の貧しさや、当時の教育制度、
日本人であるという理由で大学に合格できなかったことや、
文化大革命の大混乱。
帰国後の残留孤児達の多くが生活保護を受けざるを得ない状況にあるということ、
国家損害賠償訴訟をなぜ起こしたのか。
そもそも満州とはどういう国だったのか?
自分は初めて知る内容ばかりだった。

残留孤児だった父親を中国の養父母は大切に育ててくれて、
その娘である筆者のことも親戚・友人達は温かく迎えてくれる…。
家族というもの、親孝行についても考えさせられる。

戦争を知らない世代にこそどうか知って欲しい、
そして何かを感じ取って欲しいという作者の想いを感じたので、
ぜひ若者にも読んでもらいたいと思う。


ていねいに描かれた労作
それぞれの人生にドラマがあるものだけれど、この本に描かれている著者のお父さんである城戸幹氏の半生は、今の時代を生きている自分の環境からは想像もつかないような波乱に満ちたものである。

時代環境、国と国との関係、自分のコントロールではどうしようもない要因。自分の親世代という、とても身近な時代にこのような出来事が実際にあったということに驚くと同時に、前半、時には絶望しそうになりながらも粘り強く自分の道を自分で切り開いていく幹氏とその周りの人間模様に本当に心打たれた。

そして著者の目からお父さんの半生をたどるために自分で中国と日本を見つめる後半。中国滞在中の出来事や感情がていねいに表現されていて考えが深まっていく様子、そしてお父さんの体験や気持ちに近づいていく様子を感情移入しながらたどることができた。こんな近い時代のことなのに知らなかったことが多すぎる。
著者が中国にいて個人と個人、国と国、のギャップに戸惑う気持ちなどもとても共感した。

10年という年月をかけてお父さんの歴史をたどってこられた労力はもちろん、身近すぎる父親という存在と自分とを描くという作業は、他人でないだけに難しかったのではないかと思う。著者の城戸久枝さんに書いてくれてありがとう、といいたい。

amazonでチェック


関連する本

フェロモン
フェロモン

夏光
夏光

暴走老人!
暴走老人!

千年の祈り (Shinchosha CREST BOOKS)
千年の祈り (Shinchosha CREST BOOKS)

父さんの銃
父さんの銃


« 願いを叶える77の扉―大天使とマスターを呼ぶ 

ホーム |

 死刑執行中脱獄進行中―荒木飛呂彦短編集 »