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阪急電車

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阪急電車

有川さんの最高傑作、出ました!
今津線は、路線全ての距離をあわせても10キロに満たない、
阪急電鉄の中でも短い路線。そのわずか9,3キロ、時間にして
15分にも満たない路線を舞台に、駅ごとに繰り広げられる人間ドラマを
連作短編形式で描いた1冊。
失恋した女性の壮絶な仇討ち、祖母と孫と愛犬の繰り広げる対等な関係、
恐怖によって彼に支配されている女子大生、地方出身の大学生カップル、
図書館で見かける同じ本を選んでる好みのタイプの女性…さまざまな
どこにでもいそうな人たちが、この電車で偶然出会ってつむぐ物語は
数珠繋ぎのように連なっていく。まるで電車の車両同士のように。
「レインツリーの国」などで発揮された、甘くて切なくて可愛らしい
恋愛モノをコテコテに、なおかつ爽やかに素直に描くセンスは健在。
悪役(に相当する主人公たちに不利益をもたらす人たち)がちょっと
類型的すぎるのが残念な気もするけれど、物語を紡いでいく可愛くて
優しくて素直な人たちの魅力を堪能すればお釣りが来るというものだ。

列車という限定された場所と時間を上手に生かしきった、舞台劇のような
密度の濃くて楽しい1冊。

書きたいものを書く潔さ
関西の私鉄「阪急電鉄」を舞台にした全16編の連作短編集。

本屋で見かけた時には思わず「おぉ!」と声を上げてしまった。
まさか関西を離れて阪急電車の文字を見るとは思わなかった。しかも有川浩の小説。

阪急電車と言えば、普通は神戸・三宮と大阪・梅田をつなぐ神戸線が最もメジャーとなる。
私が神戸に居たころ最も使っていた神戸線はほとんど出てこないが、舞台となる阪急今津線には懐かしい思い出がいっぱい。
作中で紡がれる自然な関西弁も情景が思い浮かびます。

見事なつながりを見せる連作短編は、電車という限られた空間の中で輝きを放っていた。

他のレビュアの方が素晴らしいレビューを書いてくれているので、私は少し違う目線で。
可愛らしい表紙デザインも非常に好感を持てるが、個人的に嬉しかったのはカバーを外した時に見える本体カバーの色。
阪急のカラー、マルーンですよね!懐かしいなあ。
カバー最初と最後は作中のスケッチと思われる絵。
遊び心が利いた、非常に魅力的な一冊です。

恐らく、阪急電車に、しかも今津線に惹かれて本書を手に取る人は少ないように思える。
しかし、ひとたび読み進めれば、たとえ阪急電車に馴染みがなくとも物語に引き込まれるはず。
愛する地元の風景を魅力的に描ききってくれたその筆致に感嘆を覚えるとともに、書きたいものを書く。その潔さに敬意を表したい。
今年も早速素晴らしい小説に出会えました。

「下らない男ね。やめておけば?苦労するわよ。―はい、別れるだけでも一苦労でした。でも、頑張って別れてよかったです。ありがとう、おばあさん。 もし、もう一度あの老婦人に会えるならそう言いたかった。中学のときに叱られたあの老人にも、今会えるならきっと今度はお礼が言えるだろう」本文127ページより


電車女?
個人的には不幸な恋愛から立ち直ってゆく女子大生の周辺の話がすごく良かったです。あと鉄道を使う人にとっての日常が自然に描かれてる舞台設定も好きでした。鉄道マニア的な愛し方でなくても、車窓にお気に入りの景色が一つある、って愛着の持ち方もありですよね。

ただこの作者の強みでもあるんですが、女性の描き方がちょっと濃いい。辛辣でありベタ甘でありという起伏の激しさに、男性読者としては(そもそも男が読むこと想定されてるか謎ですが・笑)取り残される場面も多少あります。

電車の中での、凝縮された人間模様♪
16の短編から構成されている話だが、登場する人たちが微妙にリンクして
いるのが面白かった。それぞれにそれぞれの人生を抱えているのだが、電車の
中で知り合った人の何気ないひと言で、その後の人生の方向を変えようと
する人もいる。ある人の人生を変えた人、その人が今度は電車に乗り合わせた
別の人から、思わぬアドバイスを受けることもある。人生は持ちつ持たれつ。
電車という限られた空間、限られた時間の中で繰り広げられる人生ドラマ。
その凝縮度がとてもいい。また、登場する人たちみんなが、前向きで生きて
いこうとするその姿も、とてもいい。読後もさわやかな心地よさが残る。
何度でも読み返したくなる作品だ。


物語の冒頭は、車窓から見える「生」の文字の話題から始まり、そして、この話題で幕を閉じる。
この話題も含めて、展開される悲喜交々の話題は、どれも未来志向だ。

いくつかの駅に停車してゆく間に、数人の登場人物が、繰り返し登場して、物語を展開する。
この様な、いくつかの物語が、同時進行している感覚は、私は好きだ。

受験、出会い、別れ、初体験、車中での大恥、などなど、話題の方向は色々だが、
どれ一つとして、後ろ向きの話題はなく、どれも心地良い爽快感を伴う。

ところで、私は本はぶっ通しで読む方で、中程度の長編なら6〜7時間で読了する。
しかし、本書は、ページ数の関係もあるが、3時間余りで読んでしまった。
名残惜しくも、もっと読み続けたい気分だが、電車は終点に達してしまった。

この地は、近年に、阪神淡路大震災を経験した。
まだ、完全には傷は癒えていないが、「生」という文字に、希望を託したい。


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